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    chandeleur(聖燭節)とクレープ

    2011.02.05 (Sat)

    P1010276.jpg

    今日の写真は、赤とピンクのシクラメン。

    ≪毎年、農業高校の学生さんが育てた立派なシクラメンを届けて下さる方がいます。両手で抱えきれないくらいの大きな鉢植えです。寒い季節にぱっとその場を華やかにしてくれるなんとも色鮮やかなお花です。シクラメンはフランス語でも英語でもcyclamenと綴ります。語源は、ラテン語の「円」「旋回」を意味するcyclaminus。お花が咲いた後に花茎がくるくると丸まるところからきているそうです。なるほど、現代の英語やフランス語に残っている「サークル」とつながる単語なんですね。花言葉は、お花がうつむくように咲く姿から「内気な恋、純潔」などを意味するそう。日本では「シクラメン」という響きが、≪死≫≪苦≫を連想させることから、また鉢植えは「根付く」という意味もあり、病人(特に入院している人)に贈ってはならないとされるお花です。≫


    こんにちは。

    昨日は「立春」でしたね。暦の上では、もう春なんですね。ここ数日は日中はコートなしでも歩ける(ちょっとした移動なら)暖かさでなんだか明るくやさしい気持ちになりました。前日の2月3日は「節分」。読んで字の如く「季節を分かつ(冬が終わり春が始まる)」ことを意味する日です。帰国して初めて耳にした「恵方巻き」という言葉も今はすっかり日本全国に定着している習慣のようで色々なところでみかけました。みなさんも恵方(福がやってくるとされる方向)を向いて無言で食べたのかしらね?このまま少しずつでいいので暖かくなっていくといいですね。

    さて、今日はそんな2月の始めにフランスで行われるある習慣とその祝日の意味について少しお話したいと思います。

    2月2日は、≪la chandeleur≫と言ってキリスト教の祝日の1つにあたります。クリスマスから数えてちょうど40日目にあたる日で、日本語では「聖燭節(ロウソクの祝日)」「聖母マリアさまのお清めの祝日」などと訳されています。

    どんな日かというと、上の日本語訳から少し想像できるように、「聖母マリアさまが出産の後に初めて神殿に姿を現し体を清めてもらった日」であると云われています(また幼子イエスがはじめて神の子として聖壇の前に姿を現した日でもあります)。マリアさまがお清めの儀式を受けているときにずっと人々がロウソクを手に見守ったことから、la chandeleur(=ラテン語の「ロウソクの祝い」が語源)という名前になったと云われています。フランス語で「ロウソク」はchandelle、英語でもこの「聖燭節」をキャンドルマスと呼ぶのはこれで納得がいきますね。

    なぜ「ロウソク」なのかについては、古代より「ロウソク」は≪光≫や≪希望≫を象徴するものであり、神様を祀る神聖な場所や大事な儀式においてつかわれていたと云われています。また、このchandeleurがある2月は、長く厳しい冬が終わり希望の季節をむかえる「再生」の時であり、ロウソクの火がこの「新たな希望の光」の意味を担っていたとも云われています。2月を意味するfévrierという単語も、ラテン語のfebuare(feu +nouveau=新しい火)からきていて、やはり「再生」または「清める」という意味が託されています。

    マリアさまのお清めの儀式以来、毎年この2月2日にはロウソクを灯してミサに参列する習慣ができたのだそうです。そして、この2月2日にマリアさまが産後の体を清めたことから、クリスマス(キリストが生まれたことをお祝いすること)がこの日で終わるとも考えられています。そのため、現在でも2月2日にクレッシュ(キリストの生誕を模した飾り)は片付けられ、クリスマスツリー(本物のもみの木)もこの日に燃やされるという習慣があります。みんなそれぞれにきちんと意味があるんですね。

    現在では、これらの歴史的な意味は薄れつつあり、2月2日=「各家庭でクレープを焼いて食べる日」として定着しています。なぜ、「聖燭節」にクレープを食べるのかにはさまざまな云われがあり、「お清めの儀式の後にマリアさまが初めて口に入れた食べ物がクレープであった」「クレープのまるい形やその黄金色が太陽を連想させ、また儀式の際のキャンドルを想起させ、それらがわれわれの光であるキリストの姿と重なるため」「この日は冬の終わりを告げる日で春に向けて農耕作業を開始する日であることから、その年の豊作を願って小麦粉や卵をつかったクレープを食べる」などの諸説が残されています。

    こうした言い伝えはどれが正しくどれが正しくないというものではなく、また日本でもそうですが起源となるお話は時間の経過とともに忘れられつつある傾向にあります。「どうして2月2日はクレープを食べる日なの?」と訊いてもなかなか的確に答えられないフランス人は多くいますし、それはわたしたちが「どうして2月3日には豆を撒くの?」と言われてすぐにきちんとは答えてあげられないのと同じなのです。でも、長く根付いている風習の後ろには必ずその国の歴史なり文化なりが隠れています。難しく考える必要はありませんから、ちょっとそういったところにまで関心のベクトルを向けるといいのではと思います。そのお手伝いをしているのがこのブログでもあります。


    今ではすっかり「クレープを食べる日」という風習だけが残っている「聖燭節」ですが、この日にクレープを焼く際にはちょっとしたおまじないのような遊びがあるんです。どうするかというと、片手にコインを握りしめもう片方の手だけでクレープをひっくり返すんです。きれいに裏返せればその1年はよい年になる!と云われています。あのナポレオンもこの遊びに興じていたとの記録も残っています。結構難しいんですが、みなさんももし覚えていたら来年試してみるといいですね。

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    エロディーちゃんも水曜日の夜にホームステイ先でクレープを焼いたそうです。夜遅くに携帯が鳴ったので何事かと思ったら、「Aujourd'hui, c'est la chandeleur, alors j'ai fait des crêpes」(今日はchandeleurの日なので、たくさんクレープを焼きました!)と写真が添えられてメールが届いたのでした。ホイップクリームで顔を描くあたり、だいぶエロディーちゃんは日本化していますね(笑)エロディーちゃんが送ってくれたお手製のクレープ、せっかくなのでみなさんにお披露目しますね。

    クレープは、フランスではとっても身近な食べ物。特に寒い冬の季節には、マルシェやメトロの出口や公園などに移動式のクレープ屋さん(日本の屋台のような感じ)がでます。目の前で大きくて薄ーい生地のクレープを専用の台で焼いてくれます。仕上げに熱々の生地の上にバターとお砂糖をのせてくれて、それをお店の人が器用にパタンパタンと三角形にたたんで渡してくれます。これをふうふう言いながら歩きながらまたはベンチに座って食べます!息が白くなるほど寒い日に外で食べるクレープは絶品です!お砂糖とバターがクレープ生地の中で溶けだしてなんとも幸せな味です。是非ぜひ秋から冬にかけてフランスに行ったら屋台のクレープをお試しあれ!


    今日のおまけ

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    とっても暖かい日だったので、先日窓を全部開けてお掃除をしていたら、久しぶりにのらネコさんのママが登場。「何してるの~?」とずっとこうやって背伸びをしながらお掃除を見学していました(笑)。とっても可愛いんですが、でもこの子、とっても贅沢・・・例えば食パンをあげてもバターやピーナツクリームが塗っていないと食べなかったり食べたとしても耳をきれいに残したりするんです!もう本当に贅沢な子です。コラ!もっと感謝して食べないともうなんにもあげないぞ!


    ではでは、みなさまどうぞよい週末を!
    Bon week-end !

    p.s. 今日はMikiさんのお誕生日ね。Bon anniversaire !



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    コメント

    ご指導ありがとうございました(^^)

    とても嬉しかったです♪

    私は語学が苦手で、国文科を選んだのですが(それでも這々の体で卒業;)、日本語の挨拶言葉の方が何倍も難しいですよね。
    丁寧すぎると事務的になっちゃうし。

    今日も図書館で、「初めてのフランス語」とかで必死に学習しましたが、どうも思うようなニュアンスがみつからなくて。
    「お世話様でした」とか「お世話になりました」って、日本語ならではなんでしょうか。
    ううむ。

    そして。 どうにかこうにか、こんな感じかな?ってセンテンスにたどり着いたのですが。

    ・C'est tres gentil de votre part
    ・Je vous remercie de votre gentil

    と、似て非なる2つの例文があり、何が違うのかどちらが正しいのか頭を抱えてしまいました。
    どちらを使えばいいでしょうか?

    あまりに無知で(超初心者で)お恥ずかしい限りですけれど。
    どうかよろしくお願いいたします。
    これでも一応、秋の仏検5級を目指して奮闘中なんです(笑)。

    そうそう。
    シクラメンの花言葉には、「遠慮がち」「はにかみ」っていうのもあるんですよ。
    確かに、遠慮がちにうつむいて咲いてますよね。
    冬に咲く花は、慎ましやかでありながらも芯の強さや逞しさがあって好きです。

    実は私の名にも【花】の字がありまして。
    真冬のロウバイの花のような人でありたいと思っているんですけどねー。
    なかなか難しいです(*_*)

    Re: お返事

    こんにちは。

    お姫様さんは、国文科の学生さんだったのですね。卒業されたということは現在は院生さんでしょうか。

    図書館で本を借りてきて独学で調べているとのこと、えらいですね。

    ご質問の件ですが、

    > ・C'est tres gentil de votre part
    > ・Je vous remercie de votre gentil
    >
    > と、似て非なる2つの例文があり、何が違うのかどちらが正しいのか頭を抱えてしまいました。
    > どちらを使えばいいでしょうか?

    違いはあるので、簡単に説明をいれておきますね。主語に着目して下さい。ひとつめの文は、C'estが主語。これは英語のIt'sに相当し、つまり非人称構文です。ふたつめの文は、人称代名詞のVous(あなた)が主語になっています。つまり、なにかの行為に対してどちらも「親切にどうもありがとう」と言っているのですが、最初の文章はそのしてくれた「行為」自体に重きがおかれています。なにか実際のアクションがあってそれに対してお礼をいうときにつかいます。ふたつめは、そんな行為をしてくれた「あなた」は親切な人ですねと「人」に重きがおかれていて必ずしもひとつの行為に対してのお礼ではありません。

    どうでしょうか?少しでもニュアンス(違い)が伝わったとよいのですが・・・

    どちらがいい悪いということはありませんが、非人称構文はその場その場で知らない人にも使えます(例えば地下鉄などで出口のドアを押さえてくれた人に対してよくつかいます)、ふたつめはよく知っている人もしくは人間的に本当に親切な人だと感じたときなどにつかうことが多いように思います。

    お姫様さんの場合だと、日常的なつながりに対してお医者様にお礼を伝えたいのでしょうから、やはりこの間お姫様さんの文章に少し手を加えた≪C'est un petit cadeau pour vous remercier.≫がいいと思います。または、≪C'est un petit cadeau pour vous. En vous remerciant pour votre gentillesse.≫という言い方もあります。訳せば、これはあなたへのささやかなプレゼントです。あなたの親切に感謝の気持ちをこめて、となります。En ~antは、ジェロンディフといって「~しつつ、~しながら」という意味を持ちます。


    今回のケースだと(ヴァレンタインのチョコレートに添える言葉としては)、お姫様さんが抜粋したひとつめの文は使わないほうがいいと思います。なにかひとつの具体的な行為に対してお礼をいうのではないと思いますし、partは文字通り「パート(側)」という意味で、ちょっと儀礼的なまたは対等な関係にある印象を受けるので。ふたつめの文は間違いがあり、「親切」という名詞はgentillesseなります。

    でも、なにより自分のそして相手もわかる言葉で伝えるのがやはり1番いいかと思いますよ!

    Bonne chance !

    メグミe-247

    p.s. わたくしも忙しいので、毎回はフランス語の添削のようなものはしてあげられません。そこのところはどうぞご了承くださいね。

    申し訳ありません;

    お忙しいなか、ご迷惑でしたよね。

    でも、とても勉強になりました。ありがとうございます。
    とりあえずバレンタインの一言は、おかげさまでなんとかなりそうなので、あとはコツコツ学んで参ります。

    私が国文大を出たのなんて、平成初期。
    つまり、学生さんの倍近い年のオバサンなんです(冷汗)。

    ブリジットバルドーとお誕生日が同じで、それをキッカケにBBの映画を見るようになり。
    なんとかこれを、原語で理解したいなぁ…と。
    まだまだそれは遠いですが。

    幼い頃にバレエを習ってて「あ、バレエ用語ってフランス語だったのか!」とやっと気付いたレベルです。嗚呼恥ずかしい。

    それにしても。
    外国語を学ぶと、日本語の謙譲の美徳を改めて感じますね。
    「つまらないものですが…」とか「ささやかですが…」に該当するセンテンスってまずないし、欧米人は言わないですものね。
    つまらないものは失礼だからと、うちの母は「ほんのお口汚しですが」なんぞと言いますが。

    重ね重ね、ご親切に教えて頂き感謝申し上げます。
    これからまた、一愛読者に戻るつもりですが、何か行き詰まった時はよろしくお願いします。
    どうぞお仕事頑張ってください。


    追伸・私は湘南住まいです。
    とても暖かく、愛犬と共に海に行き、クロワッサンとカフェオレを頬張りました。
    パリジェンヌならぬ、ニースジェンヌ気分かな?

    Re: お返事

    おはようございます。
    昨日辺りから少し気温が下がって寒くなってきましたね・・・

    いいえ、迷惑などではありません。気分を害されてしまったらごめんなさい。

    いつもブログを見てくださってありがとうございます。困っているときはお手伝いして差し上げられればと思っていますが、たまにフランス語を訳して下さいなどとマル投げにされることがあって(しかも1文ではなく長い内容で)ちょっと困っていたのです。もともと担当している大学のフランス語クラスの学生のために始めたブログで、長くパリに住んでいたのであちらのお話やまたはフランス語を理解するためのちょっとした手助けになればと簡単な解説や裏話を入れたり、とにかく第2外国語でフランス語を学んでいる本校の学生たちが楽しみながらフランス語に親しんで力をつけていければと思って始めたものだったのです。

    誰でもアクセスできるブログに切り替えてからは、外部の方もたくさん閲覧してくださっているようで嬉しい反面ちょっと困ったことがあるのも事実で(なんでも教えてもらえると思われる方もいらっしゃるようで)・・・でも、お姫様のように独学で苦労しながらフランス語を学んでいらっしゃる方が困っていたらやはり助けてあげたいと思うのは教師としては当たり前のこと。ですのでまた本当に困ったときは仰っていただいて大丈夫ですよ。ただ忙しいときにはすぐにお返事ができないときもありますけれど。またどうぞ。

    お姫様さんとはおそらく同年代かと思います。わたくしの方が年をとっていますけれど。パリ時代の教え子の方たち(パリに駐在して今は日本に戻られている方たち)がお姫様が住んでいらっしゃる地域に何人もいます。わたくしのいとこもそちら方面に何家族か。何かのご縁ですね。

    バレンタイン、なにか心が伝わる言葉を添えられるといいですね。隔週で病院に通われているとのこと、どうぞお体お大事になさってください。

    Bonne journée ! どうぞよい1日を。

    メグミ

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    Author:  メグミ
    大学第二外国語フランス語クラス(ⅠA/ⅡA・ⅠB/ⅡB・ⅢB/ⅣB)、美と芸術の歴史クラス、学外講座、専門学校、プライヴェートレッスン(グループ/個人)等を担当。本学公開講座、サテライト公開講座、NHK講座、NHK提携公開講座、市民大学講座、県民大学講座、美術展映像字幕などもこれまでに担当。

    英語英米文学科を卒業後、ホテルに勤務、その後留学準備期間を経て渡仏。パリ第3大学にて仏語学・外国語としてのフランス語教育学(FLE)専攻。1996年から2005年までパリに10年在住。日系企業での通訳/フランス語講師などを経て、現在フランス語教員、翻訳家。

    仏検にて「文部科学大臣賞団体賞受賞」を本学が受賞(今までに教えた学生さん/生徒さんの中から、ベルギー大使館賞/ケベック州政府在日事務所賞受賞者も)。

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